第二章 夢のチャレンジャ―

一、六十代だからこその夢挑戦

私は一九三七年生まれ、今年六十一才になります。
今勤めている電気部品製造会社に工業高校を卒業して入社した頃は、当時としては、最
先端の加工技術の真空蒸着法によるコンデンサを開発しようとしていた時期だった。
「お前、機械屋だから真空装置も扱えるだろう」と上司に言われ、それ以来蒸着技術を究
めることに没頭してきた。
この技術は四十年たった今日も陳腐化することもなく、どんどん進化し、この業界のキ
―ポイントの技術として、各社しのぎをけずっている。
十五年ほど前に重電機メ―カ―の洗濯機が発煙事故を起こした。その原因は後進国から
輸入したコンデンサが劣化したためであり、これを契機として安全性を重視したニ―ズが
高まり、その頃から蒸着膜にヒュ―ズ機能を付加することが業界の課題となり、各社で試
作競争を始めた。他社に高価なレ―ザ―光線を応用した加工技術で先行されたが、独自の
印刷法を考案し、アメリカ特許を取得した技術で量産化し、軌道にのせた。
それまでレ―ザ―法で頑張っていた他社も生産性のよい印刷法にかなわず、数年後には
我々と同じ方式に追随するようになり、優位性を維持することが出来たが、終りのない開
発競争で独自性を発揮し続けるためには、いつまでも限られた人の手中にノウハウが有っ
てはいけないと気づき、五十五才頃より、若い後継者を選び、これまで蓄積したノウハウ
を積極的に教え委譲していった。
すっかり任せきった六十才の春、これまで蒸着を通じて得た人脈、知識を活かして、俺
にもまだ他で役に立つことはないだろうかと思案していたとき、福岡県中小企業団体中央
会が主催する『目指せ起業家』支援交流会開催の記事を読み参加した。
これが契機となって、福岡ベンチャ―システム研究会にも入会出来たし、また多くの異
業種の方々と出会い、これまで無縁だった業界を知る新鮮な喜びがあった。
新事業を始めるのに意欲があれば、オジンにも出来ると自問自答から一年が過ぎ、支援
して下さるネットワ―クも少しずつながら出来つつある。
近々、新事業を柱とした会社を設立して、これからの人生を夢挑戦に賭けています。



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