五、初めてのデ―トと同じ

たいていの人は理想の世界を思い描いている時、まわりの人は皆、自分の思い通りに行
動することを前提にしています。時にはライバルを出現させて、熾烈な葛藤を演じる場面
を作っても、それは単に自分をより美化する為の演出に過ぎない場合が多いようです。
自分ではうまくゆくはずだと思って起こした行動が、なかなかうまくゆかない原因の大
半がここに有るようです。人は、簡単には自分が思ったようには動いてくれません。
特に事業を始める場合、どんな良いアイデアであっても、又どんなに自分が走り回って
も、人が動かなければ、又人の心が動かなければその事業は絵に描いた餅となってしまい
ます。我が社がそう言う状態の時に私が帰ってきたようです。
人を動かす、あるいは人の心を動かすにはそれ相当のコミュニケ―ションが必要です。
コミュニケ―ションの第一歩は知るということですが、人に動いてもらう為には、相手
が自分を良く理解し、同調することで充実感が得られるとか、楽しくなるとか、自分の思
いも遂げることが出来るとか、世の役に立つことが出来るといった人の心を満たす動機が
必要です。
それでは、人の心を満たす動機作りはどうすれば良いのかという事になりますが、それ
は相手の立場に立って物事を考えてみるという習慣を身につけ、相手の立場と自分の立場
が両立する方策を、考え出して相手に訴え、協力を求める、その中に自分の夢があり、す
ばらしいアイデアが在るということではないでしょうか。
まさに初めてのデ―トで、相手を自分に魅きつけるにはどうしたら良いかと思い悩む姿
と同じです。私の場合、千載一遇の会うチャンスでしたので、当ってくだけろでした。
知る事の次に大切な事は相手に信用されることです。どんなに甘い言葉でささやきかけ
ても、心の奥に騙されているのではないかという不安があれば、相手は間隔を保とうとし
ます。
まず相手に信用される第一歩は約束を大切にする事です。相手に関心を持ってもらう為
にいろいろと言った事が、相手にいい加減だと思われたら、そのあとは相手は儀礼的に聞
くだけということになってしまいます。
約束をした時間、約束をした事をきちんと守るという状態が続けば、相手もだんだんと
心を開いて本音で意見を言ってくれる様になり、コミュニケ―ションが深まってきます。
また、その時に相手の言う事を良く聴くことが自分の視野を広めることになり、さらに高
度なコミュニケ―ションが生まれます。それがさらにお互いの心を理解し合う大きな要素
となります。私の場合、一年間の厚い文通が初めてのデ―トで当って砕けろを可能にした
と思います。
人が関心を示してくれたら、まず自分が言った事はきちんと守り続ける、そうすれば相
手も心を開いて意見を言ったり、自分の思いを話してくれる様になります。
それを聴き上手になって自分の視野を広げ、さらに高度な所でディスカッションする。
そうしてお互いの気持ちを理解し合う、これがコミュニケ―ションの基本だと思います。
自分が大きく成長し、ゆとりを持って話が出来たり、聞いたりできるようになれば、だ
んだんとユ―モアを交えた話ができる様になったり、相手の喜びを心から祝う言葉や、ね
たみの無い心からの、ほめ言葉が出て来るようになります。またそうなるように日頃から
心掛ける事も大切でしょう。
さらに余裕が出て来れば、その場の雰囲気を感じ取って、アドリブで場を盛り上げるテ
クニックも身についてくるでしょう。
この様な成長こそが起業家である為の大切な条件の一つと言えるのではないでしょうか。
我が身を振り返ればそのような経緯をたどってきたような気がします。



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