六、気になる人になろう

私は商学部の出身ですが、時々、あなたは工学部の何科の卒業ですか?と聞かれる。
もちろん、製造業が仕事だから、あたりまえなのかもしれないが。普通高校を卒業された
人の中にも、たくさんの技術者がおられる。私の友人は、普通高校卒業なのに、大学の工
学部出身の若い人々に、会社で技術を教えている。先端技術は別としても、経験や現場の
実技に裏付けされた、又培われた技術や、勘は、相当レベルが高いと思う。
三十年くらい前の事になりますが、建築の勉強をしていない私は、建築の図面から、製
作金物を作らなければならない事になった。図面が良く理解が出来ないので、客先のゼネ
コンの担当者に質問したら、「そんな基本がわからなければ、帰って代わりの人をよこし
なさい」との事でした。そんな方が三0〜五0%おられますが、こちらが頭を下げて、教
えを請えば、丁寧に教えていただける方が必ずおられるものです。
そしてその専門家は、私にとっては、その時から、師匠であり、赤恥をかいて質問が出
来る人になっていただいたわけです。この事は私が的はずれな本を調べたりする時間の浪
費や、知識不足をカバ―して余りありますし、大事なエキスの部分を、瞬時にして教えて
いただける、非常にありがたい方になるわけです。先方には大変御迷惑な事ですが、すば
らしい人間関係が出来ていきました。
私達は、日々何人の人に、会っているだろうか。名刺もどんどん減っていくし、いただ
いた名刺も、どんどん溜まっていく。でも、時間がたって、その名刺を見ても、どれくら
いの人が、その人との会話の内容や、顔まで覚えていられるのであろうか。
日本の人口も一億二千万人もいるし、企業数だけでも、数十万社ある。自分の会社の取
引先の関係がある人だけでも、数百人から数千人はいらっしゃるだろう。果して、私は、
何人の人に、名前と顔を、何の仕事をしてるか、何の為に会ったのか、憶えていただいて
いるだろうか。はなはだ不安である。まして、友人や関係先の方々に、お願いして、伝を
頼って、貴重な時間をさいて、やっと会ってもらった重要なキ―マンにどうしたら、自分
の事を憶えてもらえるか、何の要件であったか、何を頼まれたか、記憶していただく事は
非常に重要な事である。
私の会社に訪ねて来られる人があるが、この人は、何の用件で会いに来たのか、何を頼
まれたか、よく理解出来ないうちに帰る人もある。私も先方も、貴重な時間を費やして会
うのであれば、本日の訪問の目的をはっきりさせて、重要な要点を整理して、話の順序を
考えて、又、言葉の中に、自分達の業界しか使われていない業界用語や、専門用語が含ま
れてないか、検討し、会話をする事が非常に重要だと思っている。
それから、もっと重要な事は、話す本人が、本当にその内容を理解して話しているか、
上べだけの話なのかという点である。その人の言葉ではなくて、雑誌や新聞から借りてき
た様な、不充分な内容や話し方は、その人を理解する事や、感動を与える事なく、すぐ忘
れ去られる様です。物事を自分の言葉で表現できる能力を、常日ごろから、訓練して身に
つけておきたいものです。同じ時間を費やすなら、訪問先の方に記憶していただける様な、
訪問の仕方をしましょう。
名前や顔だけでなく、さわやかな感じで、思い出していただける様な、話や、会話を行
いたいものです。雑誌や新聞、本の中から、良い話や情報を書きとめたり、コピ―を取っ
たりして、ノ―トに張り付けて、常日ごろから整理しておく事も、重要な事だと思います。



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