四、ID野球、頭を使え
私は企業を経営したことはない。
サラリ―マンとして三十数年、中小企業専門の融資(貸付)業務に関与し、その後四〜
五年経営コンサルタントに従事している。言わば常に中小企業の経営サポ―トを仕事にし
てきたことになり、経営者に比べ迫力に欠けるが、あらゆる業種業態そしていろんなタイ
プの経営者に接してきたことで、事例経験は豊富である。
そのなかで思うのは、経営とは・企業とはいかにも多種多様で、バラエティ―に富んで
おり、同時に「絶対こうでなければいけない」と言う手法・方式もないということである。
極論すれば、企業経営には絶対的なものはなく、あくまでも相対的なもので、違法・不
法もしくは社会規範に反しない限りなんでもありと言える。だから企業間競争に勝つ(儲
ける)限り、その経営は間違っていないと言える。だったら企業経営とは、儲けることだ
ろうか?
この辺りは、人によりけりで千差万別かもしれない。
私は、儲けることは必要条件ではないと考える。
事業内容・目的・運営形態等々でいかに独自性を持つか、まさに『他をもって替えがた
い』(オンリ―ワン企業)を目指し、実現し、あり続ける事こそ、必要にして十分だと考
える。さらに言えば、ユ―ザ―の厚い支持を得続けるシステム(依頼・注文が寄せられる
信頼度の高いネットワ―クシステム)の確立を目指す企業を理想としている。
『他をもって替えがたい企業』は、多様な切口を持っていて、目的・内容・方式・方法
等々も多彩で、あらゆる方面からアプロ―チ出来る。各位がいかに独自性を構築するかの
問題である。
以下に述べる二点についても、そうした多様な要因のひとつで特にこだわる事はないが、
企業経営の鉄則で、セオリ―とも考えられる面は強く、大いに参考にはなると思う。
◎説得力ある企画立案
●論理的に物事を考える
問題点の把握ができる
歴史や伝統を重んじる
新規起業(ベンチャ―・ニュ―ビジネス)とは、既成概念にとらわれない独自性、常識
的でない、自由奔放な発想をベ―スに行われる。したがって、リスクが高く、挑戦的なの
は当然である。だが、マ―ケット・インするにしても、各方面の経営賛同者を得るに際し
ても、“なるほど”と首肯させる、筋道の通った提案が必要である。
現実に展開している経済現象を客観的にキチンと把握し、起業の独自性・新規性と比較
優位性を提案しなければならない。
つまるところ、プレゼンテ―ションの問題である。
起承転結がしっかりしていなければならない。
5W・1H(What・Who・When・Where・Why・How)を踏まえた
ものでなければならない。
また、挑戦することは斬新なものであっても、訴える相手・提案を受ける人たちが理解
し、具体的なサポ―ト意向を固めて貰えるための共感を得なければならない。それが歴史・
社会性の問題である。自分・内部の論理(立場)でなく他者・外部の論理(立場)で考え、
見る事である。
人類の歴史は仕事の分業化の進展の過程ともいえる。我々お互い、ありとあらゆる仕事
やシステム、そして多勢の人達との関係・繋がりなしには、日々を過ごすことはできない。
どんな事業といえども長い歴史の所産を背景にし、その上に成り立つことを認識し、起業
を通して新たに歴史・社会へのかかわりを持つことを自覚すべきであろう。どんなハイテ
クでも八○〜九○%は既存の技術や部品を活用しての結果なのだ。
同時に、経営・ビジネスの歴史は体力やフィ―ルドワ―クから頭とデスクワ―クへの移
行でもある。頭を使い、情報やデ―タを活用し、マンパワ―をいかに高付加価値化し続け
るかともいえる。
そのことは具体的な経営で良く解かる。代表的な手法のPlan―Do―Seeないし
P―D―Check―Actionで示されるマネジメント・サイクル。それは常に作戦
を練り、それに沿って動き、成果を計算し、課題箇所を明確にし、改めて計画を建て直し、
またそれに沿って業務遂行に移る、といった繰り返しのことである。
この事は、極めて知的作業である。
作戦・計画がどれだけ具体的かつ実践的で、提案性に富み、説得力に長けているか。
目的意識に基づいた日常の業務遂行がなされているか。そして計画・決め事と実績との
差異の要因を徹底的に理解し、対策を立てる。
このサイクルを丹念に繰り返し、「何故!何故!」、「ああでもない・こうでもない」
と試行錯誤を続ける。この知的作業こそ経営の根幹である。
もちろん、頭の中で考えるだけでは限界がある。行動し、実施し、試し、検証する事が
大事なことで、『業績・利益』という経営の数値成果は、具体的な行動・作業によって実
現する事が大半である。だから、とくに中小企業は体力、勤勉、ヤル気が第一。
頭で考えるより、デスクワ―クなんかより、外に出て一件でも多く当たれ、行動第一で
頑張れ! となるのだろう。
賃金が安く人手が余っていた、そしてモノが貴重な時代の名残りとしか思えない。
精神力・根性で突き進むのは、一時的で自滅型といえる。
確かにライバル企業に対する圧倒的な行動量、いつ何時でも対応できるフットワ―クや
サ―ビス力で、新規に市場を確保することは有力である。かつ、長期的安定的なものにす
るには、仕組みを考え、システム対応が必要になり、成功すれば世の中を変える。宅配便
ヤマトのケ―スがまさにそれである。
体や時間には物理的に限界がある。その限界をいかに個人差・能力差のままに放置しな
いか、頭の使いどころだ。
勤勉・行動は当たり前で、その当たり前の事を生かすために考え、デ―タ―(情報)を
活用するのだ。
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